建物の査定方法
中古物件、特に建物部分の査定について書いていきます。
不動産の査定をご依頼いただいた際に、不動産会社が何を考えて物件の査定を行っているか参考になれば幸いです。
新築物件であれば建材の原価や人件費などから金額の算出が可能ですが、中古物件の価格というものは非常に流動的です。
不動産に相場はあれど決まった金額などないのです。
売主はできるだけ高く売りたい、買主はできるだけ安く買いたい
不動産の仲介会社にはそういった相反する双方の間に立ち、可能な限り公平な観点から不動産の査定を行い、スムーズなお取引を実現させることが求められます。
建物は築年数の経過と共に劣化していく財産です。
税金の計算においても時間の経過により減少した不動産の価値を減価償却費として経費計上していきます。
弊社では一部の例外を除き、中古物件の査定時に減価償却費の計算を応用した算定式を用いて建物価格に目安の金額を設定します。
計算式
(建物取得価格×0.9)×定額法償却率×築年数=減価償却費
(建物取得価格×0.1)+(建物取得価格-減価償却費)=建物価格
建物価格算出後、別に査定した土地の価格と建物価格を合算して目安の査定額を提示します。
ただし、建物の状態や立地条件は物件により異なります。
同じ築年数の物件でも長年放置されたボロボロの物件と継続して手入れを行った綺麗な物件とでは需要も異なるため計算方法や査定額に大きく影響します。
・算出した建物価格
・個々の建物の状態
・周辺相場
等々
そういったものを基準にして最終的な査定価格を提示します。
不動産会社が提示する査定額はあくまで参考価格です。
「査定額がなぜこの金額なのか」という部分の説明は行いますが、最終的には物件の所有者である売主様に売り出し価格を決定していただきます。
補足
査定の際に以下のような建物の法定耐用年数表も参考にしています。
おおよそですが、法定耐用年数を超えると建物の査定額より解体費用の方が高くなってきます。
建物査定額を大まかなたたき台として、物件の現状を踏まえた提案を行います。
購入者のリフォームを見越した査定額の減価修正や、解体更地渡しなど土地単体での価値を高める提案など
計算式補足
・建物取得価格が不明の場合
国土交通省の建築着工統計から算出した「年度ごとの建物の標準的な平米単価」を基準にして建物の建築当時の建築費用を概算します。
詳細はこちら
・0.9を掛ける理由
一部の例外を除き、ほとんどの建物は築年数が経過しても取得価格の10%は残存価格として残ります。
そのため、減価償却費の計算対象は建物取得価格の90%になります。
廃墟などそのままでは活用が難しい物件についてはこの限りではありません
・償却率については減価償却資産の償却率等表を参照
償却率に用いるのは「定額法」です。
税制上は建物の取得が平成19年(2007年)以前か以降かで旧法・新法の適用が変わります。
建物の査定においては建築年が平成19年(2007年)以前か以降かで旧法・新法の適用を判断します。